[子育て泣き笑い]/鹿児島市PTA連合会会長・武田敏郎さん

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企画[子育て泣き笑い]言葉の裏にある心伝えて/鹿児島市PTA連合会会長・武田敏郎さん
南日本新聞社 2001.01.08 朝刊 (全1870字) 
 鹿児島市PTA連合会会長として五年目を迎えた武田さん。表情は柔らかいが、問題が山積する教育情勢を前に「今こそ父親の出番」と張り切る。さまざまな機会に教育における家庭の重要性を説き、特に言葉の大切さを強調する。

 「キレる」という言葉があるでしょう。若い人たちが怒りを表す表現。ほかに「壊れる」「いってる」。愛情表現でも「ラブラブ」とか。これらの言葉は、若者が自分の微妙な感情を表現できないことの表れだと思います。

 「怒り」がこみ上げてきても、「歯がゆい、じれったい、いらだたしい―」など、浅いところから深いところと感情の度合いがある。そして、日本語にはそれを表現できる豊かな言葉があるはずなのに、若者は「キレる」の一言ですべて片づけてしまう。自分の感情と正面から向き合うことを避けているからではないでしょうか。

 事件を起こす少年たちも、自分の感情を表現する言葉や方法が分からないのかもしれない。やはり、幼いころから、親が日本語の微妙な差異を教え、その言葉の裏にある心を伝える必要がある。そうすれば、子供は自分自身と向き合い、自我を確立していけると思います。

 ここ数年、県内の多くの小中学校で発足した「おやじの会」「父親の会」の可能性に期待する。

 言葉は悪いですが、製造者責任として、父親ももっと教育、子育てにかかわってほしい。各学校の「おやじの会」の活動はまちまちですが、「できる人が、できるときに、できることから」と呼びかけています。

 二女が通った小学校では、父親たちが中心になり、夏休みにバスで地引き網に行ったり、学校の降灰除去をしたり。そのうちに、釣りや音楽など趣味を通じて父親同士のつながりが出てきた。バンドを結成したある父親たちは「先生も加えよう」と教師と顔が見える関係になりました。

 おやじの会をきっかけに、父親たちと教師が緩やかにつながり、自分たちが住む街の大きなネットワークになれば、地域の教育力を高められるはずです。

 三年前の夏、各学校のおやじの会が集まって「鹿児島市おやじの会」を結成。旗揚げイベントに「真夏の音楽会=父親(とうちゃん)から子供(きみ)たちへ」を開いた。

 父親たちで酒を飲んでいるとき、「手作りで音楽会をしましょう」と盛り上がった。実は、以前から子供たちや保護者に、神戸市に住む全盲のバリトン歌手時田直也さんを紹介したいと思っていました。ハンディに負けず、活躍する姿に触れてほしかった。

 酒の席で決まった話なので、最初、父親たちも及び腰。しかし、数人で一生懸命取り組んでいたら、「照明を扱える」「イベントの台本が書ける」という父親たちが集まってきた。資金を集め、チラシなど準備はすべて手作り。最後には七十人ほどになりました。

 演奏も父親が中心。初めて和太鼓をたたく人、作業服を着てスコップを三味線に見立てたパフォーマンスをする人がいた。子供たちも出演。時田さんも心地よく歌ってくださったと思います。音楽会が終わったとき、「父親たちはこんな気持ちと力を持ってるんだ」と感激しました。

 二女もバイオリンをひきました。時田さんの生き方や私たちの姿を見て、何かを感じてくれたのではないでしょうか。

 南日本美術展の委嘱作家も務める建築家でもある。建築と子育てには通じる部分があるという。

 単体の建築物をデザインする場合でも、周囲の環境や街との調和など全体とのかかわりに創造力を働かせなければなりません。そして、どんな立派な建物が出来上がっても、それを動かす「人」が最も大切です。

 子育ても一緒。子供が周りの人々とどうかかわっていくかに常に気を配り、子供自身が周囲との調和に創造力を働かせられる環境をつくる必要があります。

 私は、長女が幼いころから子供たちと毎日握手をしてきました。子供が握り返すときの力や表情で、その時々の心持ちを推し量ってきた。そして、握手で感じた「いたわり、怒り、優しさ」などの感情の微妙な差異を、言葉や態度で伝えてきたつもりです。まずは、親が子供の感情に気付くこと。そうすれば、子供も周囲との関係を築いていけると信じています。

(社会部・西青木亨)

 ●たけだ・としろう 56歳。大島郡和泊町生まれ。鹿児島大工学専攻科修了。1981年、鹿児島市に建築事務所を設立。同市の県立石橋記念館や曽於郡大隅町の「弥五郎伝説の里」などの設計を手掛ける。日本建築家協会本部理事。空手六段の腕前で県空手道連盟理事。妻・朋子さん(43)、大学生の長女(21)、高校生の長男(18)、中学生の二女(15)の5人家族。
 製造者責任として、父親ももっと教育、子育てにかかわってほしい。
そうですね、給料を持ってくるだけではなく、地域活動もしなければ、子供は地域で守られて育てられるとすればコミニテイの一員として、親父の会などに積極的に参加するとともに、子育て情報の交換が必要になってくると思います。
このフォーラムもそのような意味でお役に立ちたいと思います。
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